2008 12 03

12 03

夜、悠治さんのコンサートに行ったら休憩時間に久しぶりに佐々木敦さんに会って面白い話を聞きました。
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というのも、最近、東大の駒場で佐々木さんと僕の芸大のときの作曲の先生の小鍛冶邦隆さんが最近シュトックハウゼン関係のシンポジウムで同席したというのは以前の日記に書いたと思うのですが、
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そのときに小鍛冶さんから佐々木さんに「渋谷君を教えていたものです」、という話になって
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当然、当時の僕など知らない佐々木さんは「渋谷君はどんな学生だったんですか?」と聞いたところ
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小鍛冶さんは「多分、今とまったく変わっていないと思います」と言い切ったらしく笑、何しろ10年近くお会いしていないので僕の活動などを御存知だったのが驚きだったのですが、
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もっと驚いたのは
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「彼は芸大を卒業するときに、『現代音楽のことは全部分かった、だから僕はもう違うところに行きます』と言って本当に違うところに行ったんですよ」と仰っていたということで
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しかし、とんでもなく生意気な学生ですね僕は笑
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そんなこと言ったのも完全に忘れていた、というか全く記憶にないのですが言っていてもおかしくはないという気もします。当時の自分を顧みるに。
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小鍛冶さんは芸大を卒業した後に作曲をメシアンに習い、指揮をチェルビダッケ(!)と山田一雄に師事し、第一回のクセナキス作曲コンクールで第一位になるというバリバリのアカデミッシャンで、僕は今考えると非常に良い意味で抑圧されていたんですね。
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というか、教育というのに僅かながら可能性があるとしたら有効な抑圧くらいだと思うし、学生の個性を伸ばしてあげるなんていうのは方便で、本当の個性とか才能は潰しても出てくるものなので御丁寧に伸ばしてあげないといけない個性なんていうものは無価値同然なわけです。
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当時の僕は悠治さんと即興したりミニマルを作曲して自分のアンサンブルみたいなもので演奏したり、そういうコンサートを学外でオーガナイズしたり、まあ色々やっていたわけです。そのときの関心の赴くままに、とにかく色々やっていた。ピアノ弾きのバイトもしてたし。
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あと、まあ現代音楽業界に絶望していたこともあったり、非西洋の音楽に関心が向かっていたこともあってことごとく対立したりしたこともあったのですが
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まあそういう自分の活動を西洋音楽のアカデミズムを体現しているような師匠に否定されることによって、なぜ自分が今これをしているのか?何がしたいのか?という自問は自答のためだけではなく必要となるわけで、有意義だったと思います。
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いや、しかしびっくりしました。
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悠治さんのコンサートはパーカッションとピアノによる新曲初演3曲を含む充実したものだったのですが、以前初演を聴いたピアノソロのアフロ・アジア的バッハが非常によかったです。
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初演を聴いたときは正直、それほど好きじゃないというかアフロアジアというにはまず響きが堅い音楽だなあという印象で、RTで小崎さんが絶賛したりしているのを読んでかなり??という感じだったのですが、今日聴いて非常にいいと思った、というか初演時とは別の音楽になっていた、
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などどこれまた生意気に終演後のロビーで悠治さんに話していたら、悠治さんの奥さんの美恵さんも「わたしもそう思ったのよ、今日は初めていいと思った」とか言い出して、一緒にいたコレクタ時代の悠治さんのマネージャーの平井さんが「みんな言いたい放題だな笑」と爆笑してました。

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