2006 09 22
09 22
15時から東大の研究室で打ち合わせ。
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これは今、走っているプロジェクトで去年のICCで発表したDescription Instabilityという作品の進化版を作るというもので。
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あの作品は初期のカオス実験で使われたテイラークエットという装置を媒介に乱流データから音を生成したんだけど、核となっているテイラークエットの部分は岐阜大学から借りていたんですね。これは日本では数える程しかない装置で、精密さが重要故に重くてゴツいものだった。
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で、今回はその核のテイラークエットの部分から自分たちで作って新しい音の装置として制作、発表しようというものでこれは科学技術振興機構のモデル事業として進行してます。
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要するに実験装置をゼロから制作するというもので、この前のメンバーに加えて装置デザインの部分でATAKからlee君に参加してもらって着々と進んでいるんですね。
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ただなかなか難しいものがあって、何度も打ち合わせや実機の計測などしてたんだけど最近になってやっと最終形が見えてきた。
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で、今日は安久工機という実験器具製作専門の会社の田中さんに来て頂いて借りているテイラーの精度などを計測。
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結果分かったことはサイズの誤差などは考えている以上に精密ではない、つまり0.01mmの精度などとは程遠いということで、これは非常に驚いた。科学は理論上のモデルを現実に移すということに非常な弱点があることは前から感じていたことだが、機器の精度は実験/研究に影響がないはずはないわけでそうすると理論モデルとは何かという問題にぶつかる。
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特に今のようにアートプロジェクトで実際に機器を制作するという場合、理論モデルが機器の制作上反映できないとすると理論モデル自体ほとんど意味がないということになるわけで、だとすると厳密さを軸にアート(特に音楽)と科学の接点を考えるということを疑わないといけない。
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つまり精度や厳密さということはコンピュータからはみ出した場合、アートの側がイメージしているほど単純ではない。つまり科学に対する単純な情景によって支えられてきた妄想に立脚点を置くのは危険だ。コンピュータで作られた音楽だってスピーカーから出力されれば関係は1:1ではなくなるわけで。
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というわけでこのプロジェクトは精度を巡る装置とコンピュータ、音というテーマが自動的に設定された感がある。楽しみになってきた。