unformed

edit

By atak 2015-03-25

unformedは、僕の音楽レーベルATAKによる音と空間、建築による新しいプロジェクトです。

まず、特定の空間や建築のためにオリジナルの音楽を作り、それを可能な限りシンプルなシステムで建築、空間にインストールします。
音楽は一定の曲をただ繰り返すのではなく常に変化を続け、空間が音によって変化と生成を繰り返すことを主眼にしています。
このプロジェクトは、基本的に公共空間や恒久設置を前提としています。
そのため、メンテンナンスやシステムトラブルの負担が大きいコンピュータの使用を避け、数台のフラッシュメモリーやiPodとスピーカーといった簡易なシステムでどれだけ豊かで複雑な音楽的変化を生成し続けられるかということに挑戦しています。

オリジナルの音楽は渋谷慶一郎が作曲し、サラウンドを含めたジェネレート・システムをサウンドアーティストのevalaが担当します。

つまりこれはATAKによる音と空間の生成プロジェクトです。


僕がこのプロジェクトを思いついたのは、あるレストランの窓から見える風景を見たときの事です。
その風景が見える席の人気は非常に高く、そこで食事をしたい人でいつも混雑しているという話も聞きました。

窓から見える風景は気候や温度、時間によって常に変化し続けます。
しかしその変化は非常に微細なものです。
つまり全く変わらなく感じる時間もあれば、雨や雪のように全く違うこともある。
しかし、これが常に全く違う風景だとしたらその席から見える風景を目的に人が訪れることもないでしょう。

つまりあるフレームの中での変化や複雑さを「自然」や「風景=視覚」に人間が求めるとするなら、それを「人工」的に「音楽=聴覚」で作ることも可能ではないか?と思ったのが発端です。

これはこの十年、コンピュータで音楽を作る際、特に池上高志さん(東京大学教授/複雑系研究者)との共同研究を開始した2005年以降の一貫したテーマでもある「音楽にとって複雑さとはなにか?」という問題とも直結しています。
例えば自分が住むマンションのエントランスに流れている音楽は有線のように常に全く違う曲の必要はないでしょう。
しかし常に同じ音楽が呪文のように流れている必要はもっとない。
窓から見える風景のように、一定のトーンは保ちつつも常に変化している音楽が特定の空間にインストールされているのは音楽と空間の関係として面白いのではないか?というのがそもそもの発端です。

一定の形を持たない変化し続ける音楽を作るプロジェクトにunformedという名前をつけて、これまでに大和ハウスやBOSE株式会社との恊働で、2つのマンションにプロトタイプをインストールすることが出来ました。
これらはマンションのエントランスに合わせて、先ほど書いた「二度と繰り返さない音楽」をつくり、システムの開発、設定、スピーカーの選定まで行いました。
原理的にこのプロジェクトは場所の大小を問わず実現可能であり、例えば公共空間やビル一棟を丸々全てサウンドデザインすることも可能です。
エントランスや店舗、部屋一つのための音楽を作ることも可能です。

同時に僕にとっては新しい環境音楽、アンビエント・ミュージック(とあえて言います)の開発になれば面白いなと思っています。
そうした音楽が建築や環境、都市開発と共に進化していければ良いと思っています。
一緒に何かやってみたいという方はinfo@atak.jpまで御連絡ください。

これは僕にとって成長が楽しみなプロジェクトです。

渋谷慶一郎 (ATAK)

渋谷慶一郎

音楽家。1973年生まれ。東京芸術大学作曲科卒業。
2002年に音楽レーベルATAKを設立、国内外の先鋭的な電子音楽作品をリリースする。
代表作に “ATAK000+”、 “ATAK010 filmachine phonics” など。
2009年、初のピアノソロ・アルバム “ATAK015 for maria” を発表。
2010年には “アワーミュージック 相対性理論 + 渋谷慶一郎” を発表。
以後、映画 “死なない子供 荒川修作”、 “セイジ 陸の魚”、”はじまりの記憶 杉本博司”、 “劇場版 SPEC~天~”、”TBSドラマ SPEC” など数多くの映画音楽を担当。
2012年には “サクリファイス 渋谷慶一郎 feat.太田莉菜”、 “イニシエーション 渋谷慶一郎 + 東浩紀 feat.初音ミク”を発表、コンサート “ジョン・ケージ生誕100年記念コンサート One(X)”をプロデュース。
同年末に、初音ミク主演による世界初の映像とコンピュータ音響による人間不在のボーカロイド・オペラ “THE END” を山口情報芸術センター(YCAM)で制作、発表。初音ミク及び渋谷慶一郎の衣装をルイ・ヴィトンが担当し、斬新なコラボレーションが話題を呼んだ。
2013年5月、東京・渋谷のBunkamura・オーチャードホールにて、”THE END” 東京公演を開催。
同年11月には、パリ・シャトレ座にて “THE END”パリ公演を開催。三公演のチケットが即時にソールドアウトするなど大きな話題となった。
また、同時にCD作品として “ATAK020 THE END” をソニーミュージック、およびソニーミュジック・フランスから発表。
2014年4月、パリのパレ・ド・トーキョーで開催された現代美術家・杉本博司の個展に合わせて、杉本とのコラボレーション・コンサート”ETRANSIENT”を公演。個展で発表される杉本のインスタレーション3作品にも立体音響による音楽を作曲、提供した。
同年10月には、昨年THE ENDパリ公演を開催したシャトレ座にて、ピアノとコンピュータによるソロ・コンサートの開催が決定している。
2015年6月には、ボーカロイド・オペラ”THE END” のオランダ・ホーランドフェスティバルでの公演が決定。
2016年にはパリ・シャトレ座との共同制作による、出演者が人型ロボットだけという新作のアンドロイド・オペラの初演も決定している。
http://atak.jp

evala

1976年生まれ。音楽家、サウンドアーティスト。
先鋭的な電子音楽作品の発表および上演、また公共空間、舞台、映画、広告メディアなどで立体音響システムや先端テクノロジーを用いた多彩なサウンドデザインを行なう。
主な近作に、インスタレーション『大きな耳をもったキツネ』(NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]/2013)、『Steppingstone』(経済産業省クール・ジャパン・ファンドオフィス常設/2013)、『void inflection』(山口情報芸術センター[YCAM]/2011)、CD『white sonorant』(PG/2012)、『acoustic bend』(port/2010)、『Perfume World Tour 2nd』楽曲 (文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品)、ボーカロイド・オペラ『THE END』音響プログラムなど。
また渋谷慶一郎とのラップトップ・デュオ ATAK Dance Hallとしても活動している。
http://evala.jp
http://port-label.jp

comments

Add comment

Your comment will be revised by the site if needed.