2015 10 23

TAE ASHIDAのコレクションの音楽をライブでやりました

 

先週10/16にTAE ASHIDAの2016 Spring/Summerのコレクションが六本木のグランドハイアットであり、そのショーの音楽をライブでやりました。

ライブでやりました、といってもこれはショーの音楽としてはかなり異例、大掛かりなものでした。

 

 

ランウェイの正面の紗幕越しに僕のピアノ、ラップトップ、TR-808、Orgon Systemというアナログシンセサイザーがずらっとセッッティングされて、22分のショーの間にそれらを使って即興的に音楽を組み立てるというもので・・かなりトライアルというか実験的な試みだったと思います。

 

なので当然事前の音楽のデモ出しなどはナシ、メゾンも含めて全てのスタッフが当日のリハで初めて音楽を聴くということになったのですが、これすごいことですよね笑

 

というか僕はこの点に結構感動してて、ここまで任せる勇気というのはなかなかない。

なので、応えるべく事前の準備は丁寧にしておきました。

同時に、ここまで信頼されると結果は良いに決まっているわけです。

 

 

僕がショーの音楽をやるというニュースが流れたとき、「即興で渋谷がショーの音楽を!」という見出しが派手に出ていましたが、22分のショーを完全な即興だけでやってもあまり面白くならないというのは明らかで、ショーの構成に沿って3部構成にしました。

 

・Part1 TR-808のリアルタイムプログラミング

・Part2 コンピュータに仕込んでおいたビートの掛け合わせ、シーケンス、ドローンとピアノの即興

・Part3 今回のショーのために書き下ろしたフィナーレ用の曲にピアノをその場で即興的につけていく

 

TR-808のリアルタイムプログラミングは、本当にその場でハイハット、リムショット、クラップとかいう感じで即興的に音を鳴らしながら組んでいく。だから音が段々増えていくのです。

結果、組み上がったビートは毎回違うものになって、それに合わせてピアノを弾いたんだけど、ベースがないドラムマシンとピアノというのは結構生々しくてよかった気がします。

 

 

演出はドラムカンの田村さんだったのでPAのセッティングも非常に慎重で良い仕上がり、ピアノもスタンウェイのコンサートグランドというバッチリなセッティングでやってて楽しかった。

 

しかし13:30,16:30,19:00の三回のショーを全てライブでというのは結構ハードでした。

前日徹夜で会場入りしたので、本番前に控え室でヘアメイクされながら完全に爆睡したときはびびられました。

しかも、そのあとフランク・ゲイリー展を記念したルイヴィトン主催のディナーに出席して会食させて頂いて、そのまま深夜3時まで飲むという強行突破な日でした。

 

これは別のとこでも書いたんだけど、この前キャンペーンの音楽やったゼニアにしろTAE ASHIDAにしろ伝統的である種オーセンティックなブランドが実験的なことを高いクオリティで取り入れようとしている動きは面白いなと思っています。

で、そういうときに誘ってもらえるのは非常に嬉しいものです。

 

逆に言うと若いブランドでもっとそういう動きが欲しい気もする。前から思ってるけどいわゆるテクノやロックでショーの音楽やることほど安全なことはない、というか服のコンセプトと結びついていたとしてもそれは反動的といっていいと思うんだけどね。というかもはやテクノやロックがコンセプトの中核にあること自体が反動的なんだけど・・それはともかく。

 

今回のショーの音楽をライブでやるって決まったときも最初に無意識に「TR-808をひさびさに使おう」と思ったんだけど、それもテクノ文脈ではなく、レキシコンのハードウェアのディレイと組み合わせてビンテージの音色の質感と揺れを増幅してみた。

普通にビートとして鳴らすのではなく、そこに含まれるノイズとリアルタイムで打ち込むような偶発性を入れたかった。

 

エレガントなメゾンだからストリングスとピアノできれいに、というのは全く気分じゃなかった。

テクノや聴きやすいビートもので、というのも念頭になかった。そうしていくと今回のような感じになったんだけど、普段とは全然違うのにすごく好評でほっとしました。。

 

なにはともあれ、うまくいってよかった。

デザイナーの芦田多恵さんはじめTAE ASHIDAチームのみなさま、演出の田村さんをはじめ信頼して任せてくれた関係者のみなさまに感謝します。