2005 10 04
10 04
dub lilac@ピットイン。の日。
昼間、悠治さんに電話して諸々確認。事前に僕から提案していたのは即興の中に曲を入れることで、お互い何を弾くかは自由だけど完結しない時間の中に完結した時間の枠組みを持つ音楽を持ち込むのは有効だと思ったので。
で、何弾くのかなと思って聞いたら「ハウアーなんてどう?笑」と言われて面くらいました笑。
ヨーゼフ・マティアス・ハウアーで検索してもらえれば分かると思うんだけどシェーンベルグと同時代の12音技法の作曲家で自分が12音技法の創始者だと主張し続けたせいでシェーンベルグと決裂して、その後ナチスの迫害にあいながら1000曲の12音技法による曲を作り続けたというルネッサンス期の音楽家のような人です。
僕が驚いたのはハウアーが悠治さんが一貫して演奏している小さな音楽、あえて言うと辺境音楽ともいえる系譜に入っていると同時に、音程の乱数によるコードの自動生成システムを指向していたということでコンピュータによるセッションの中で弾くピアノ曲という意味ではこれ以上フィットしている音楽もない、つまりランダムネスも含めた乱数によって操作された音響の中で乱数による自動生成を指向したピアノ曲をランダムな曲順で即興的に演奏するという多層な意図を感じたからです。
なので僕はそれにシェーンベルグを同時演奏したら面白いかもと思ってピアノ曲の楽譜を楽器と一緒にスーツケースに入れておいた。ハウアーに重ねて。あ、あとケージの「Dream」と「人と水牛」のスコアも。これは両方ともprophet5と相性イイ感じだったから。
で、17時頃会場入りして急いでセッティング。エバラ君と若い衆2名(中村ショウタとキムラヨウ19才)、映像収録の逢坂君とその友達、mariaと。
18時頃、悠治さんが会場入りしてサウンドチェック。モニターがやたら大きくて外の音が小さいのでバランスを何度も変えてもらう。コンタクトマイクやリアルタイムプロセッシング、録音の準備も同時進行していてバタバタ。結局30分押して開場(土下座)。前売りで満員になっていたとはいえ予想以上の集客で嬉しい。
セッションは1部と2部に分かれていて1部は悠治さんが最後にハウアーを弾いたのと僕が「人と水牛」をその場でアレンジして弾いたの以外は完全に即興。始めも終わりも決めていない。2部は僕が最後にケージの「Dream」を弾いたのと悠治さんのハウアーにシェーンベルグの断片を弾いたり、僕がリクエストしておいた「さまよう風の痛み」と長谷川四郎の詩の朗読など、maria事前に朗読してプロセッシングしておいた「カフカ夜の時間」の悠治さんが書いた英語のテクストなどが重なったりしたんだけど要素が多過ぎたかも。「さまよう〜」は僕が最初にprophetで弾き始めたんだけど面白い重なり方だった。mariaの声も。悠治さんのピアノはゴールゴベルグ以降、自由度を増している。聴く度に思うんだけど。
しかし非常に不思議な時間だった。特に1部に音と音の間に引力があるというか、いわゆる間とか沈黙とかいうのとは違う有機的な停止があってそれは収穫だったし面白かった。聴きに来てくれた皆様どうもありがと。
終了後上の沖縄料理屋で20名くらいで打ち上げ。