2004 07 26
07 26
・夜、渋谷のユーロスペースで「きわめてよいふうけい」を見る。
http://www.littlemore.co.jp/cine/kiwamete/kiwametetop.html
・これは写真家の中平卓馬を題材にホンマタカシが監督したという
写真家による写真家の映画で試みとして面白いと思います。
・見終わって分かったのはこれはホンマタカシの視線による
中平卓馬を含む「きわめてよいふうけい」であって、
中平卓馬の見た「きわめてよいふうけい」ではない。
ということで。
・特にラスト(別に書いてもいいよね。ストーリーがある映画じゃ
ないし犯人とかいないし)、海で佇む中平のロングショットは
完全にホンマタカシの世界で、これはあまりにも耽美的過ぎる
と思う。
・中平とは乖離していると同時に、スクリーンに回収されている。
・「これはドキュメンタリーではない。 あるひとりの写真家を
見つめた<ポートレイトムービー>である。」
・という説明の通り、中平の呟く言葉は全編に渡って聴き取りにくく
それは意図的らしい。
・けど僕はもっと聴きたい、というか何か喋っていたら当然内容は
知りたいわけで、それが伝わらなくてもいいというコンセプチャ
リズムに付き合うのは全編だとつらい。
・全編、というのは途中で出てくる森山大道のインタビューも
何だか聴き取りにくくて、これは内容は分かるとはいえ中平が
呟く「届かない言葉」とのコントランストを考えるともっと明確
に集音するべきだったと思う。
・あと写真家が映画の撮影をすると映画の中に写真的な静止画像が
頻出することが多いんだけど、
・何でそんなことが出来るのかという疑問はともかく、これは写真家
の文学性が際立ってしまうことがほとんどなので僕は好きではない。
・というか少なくともそうした文学性と無縁に存在しているのが
中平卓馬なわけで彼の見ている、きわめてよいふうけいは全然
違ったものだろう。
・だからもっと「写真家であること」を放棄したカットと視線を
見たかった。
・けど、こうした全編に渡る愛情と優しさに満ちた世界が、現在
という時間に、特に若い写真とか映画とかアートとか好きな子達
にフィットするというのはよく分かるしそれが悪いとは思わない。
・この国で青は哀しみと優しさという本来まったく別の感情を同時
に表す色として機能している。
・よく言われる通り、ホンマタカシしかり北野武しかり。
・外部から見た現在の日本のある側面でもあるだろう。
・中平卓馬の孤独は深い。