2007 10 29
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うーん、原稿が続いていて日記更新する時間がないす。invitation誌に「爆発ー固定」というピエール・ブーレーズの曲の題名と同名のテクスト書いています。内容はchristian dior展について。
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というわけで申し訳ないのでATAK011の元になっているATAK NIGHT3のコンサートレビューがmac power誌に載ったときに書いたテクストを。今年の3月に書いたわけで時間経つの早いですねー。
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ATAK NIGHT3/ATAK+Pan sonic+Goem Japan Tourをふりかえって。
今は全てが終わって僕には珍しくある種の虚脱感を味わっている。そのくらいこのツアーは大変だった。フィンランドからPan sonicとオランダからGoemを迎えて山口/京都/東京の三都市で行ったこのコンサートツアーは僕のレーベル・ATAKの設立5周年と重なるようにスタートしたが、同時に僕にとってはサウンドのフィジカリティーとは何か?という問いとアナログ、手による演奏との戦いでもあった。
Pan sonicは今までに500回以上のライブをコンピュータを一切使わないアナログ機材の演奏によって行っていて、その「機械」と「手」による身体性は完成の域に達している。サウンド・アートというジャンルは国際的なネットワークがあり、テクノロジーを媒介にしたカッティングエッジは日々更新されている、はずなのにその頂点に君臨していると言っていいPan sonicは制作/演奏の全てをアナログで行い常に高いクオリティを誇っているという鮮やかな語義矛盾に対して、音楽を作る全てのプロセスをデジタルでやっている僕は何が出来るのか?という問題に直面した。それはつまりコンピュータでしかできないことは何か?ということでもある。僕が出した結論は「手では不可能な変化」と「音の解像度」に徹底的にフォーカスすることで、これは現状テクニカルな部分で多少の無理強いが必要になる。そう、僕は彼らに刺激されてツアー中も朝までライブの素材を作り直す日が続き、これは完成かも、と思ったのは最終公演の開始2時間前、2月23日の21時だった。というわけでこのツアーは自分を無理矢理ググッと更新する感じがあった。
そもそもこのツアーの発端は彼らの音を本当に高い解像度で聴いてみたい、近くで一緒に音楽をやることは刺激になるはずだということだった。そのために全公演ともサウンドシステムは万全を期した。特に代官山UNITでの東京公演ではMartin Audioの最新のラインアレー・システムによる四方向からのサラウンドを持ち込むことによりフロアでの体感は凄まじく、脳が震えるような低音と高密度な音の粒子が舞うような中高域のバランスはこれまでに聴いたことのないレベルだったと思う。Goemはオランダを拠点に20年以上に渡って電子音楽の最前線をリードしている人物だが、彼をしても今回のサウンドシステムや特に東京の超満員のオーディエンスの音色とリズムの微細な変化や精度に対するビビットな反応は驚きだったようで、確かにそこには繊細な狂気と新しい音楽への欲望が渦巻いていた。そんな中では最初に書いたアナログとデジタルの二項対立など些細な問題だし、誰も聴いたことがない音色とリズムの新しい音楽のかたちが見えた瞬間も何度かあった。音楽は止まらない、なんていう言葉が演奏中に一瞬よぎったのは寝不足と熱狂のせいだけじゃない。
2007.3.05
渋谷慶一郎(ATAK)