Derek Jarman / BLUE NIGHT by Keiichiro Shibuya + Etsuko Yakushimaru @Hara museum, Tokyo
2010
Derek Jarman / BLUE NIGHT Installation
PLACE/DATE:
@Hara Museum, Tokyo
2010/8/28
ARTIST:
Keiichiro Shibuya + Etsuko Yakushimaru
SUMMARY:
東京都品川区の原美術館で開催中のクロスカルチャー・イベント<BLANK MUSEUM>の2日目となる『BLUE NIGHT』が行なわれ、デレク・ジャーマン『BLUE』の上映と、渋谷慶一郎と相対性理論のやくしまるえつこが出演しインスタレーションを披露した。
映画の上映までは、1Fの階段付近では大石麻央(動物マスクの人体彫刻)が自らの作品を被り出演するなど、昨日行なわれたLUCIFER NIGHTのピリッとした緊張感と変わり、この日の館内はリラックスしてくつろげるムードに満ちていた。
上映開始の時間となり、館内のすべてのギャラリーで、デレク・ジャーマンがエイズの闘病を続けながら、最初から最後までを青一色で描いた『BLUE』が日本語字幕付きで上映。彼の遺作であり、病気に伴う肉体的/精神的な信じがたい痛み、宗教観、人間の意識、青という色にある神話性など様々なイメージを綴っていく作品に続いては、各ギャラリーで照明家・仲西祐介によるライティング・インスタレーションがスタート。ギャラリーIIの『BLUE SCREEN』では、スモークがたかれたギャラリー内のそこここに角度をつけた鏡が置かれ、青い光が投影されることにより、直前まで青い映像が映されていた壁に見ている人たちの影が次々と映されるという趣向。
部屋ごとのコンセプトに基づいた照明によるBLUEのバリエーションは、まさに体験するインスタレーションと言えるもので、他にも揺れる水面が淡くサイケデリックな文様を有むギャラリーIIIの『BLUE WIND』、何の変哲もない壁を窓から覗くと別の像が浮かび上がるギャラリーIVの『BLUE WALL』、明滅する光により観客のシルエットが青く壁に映し出されるギャラリーVの『BLUE SHADOW』と、デレク・ジャーマンが青に込めた精神を新たなかたちで表現していた。
この後、中庭では美術館の壁面に『BLUE』の映像が映されるインスタレーションが行なわれた。白い原美術館の外観が青く染められ、そこに『BLUE』のサウンドトラックが流れるという趣向で、さらに渋谷慶一郎が緑豊かな中庭に置かれたスタンウェイのグランドピアノによりデレク・ジャーマンの『BLUE』に新しい息吹を与えた。後半にはこの夜の特別出演であるやくしまるえつこが加わり、『BLUE』の台詞の日本語訳をリーディング。
サウンドトラックとのコラボレーションのあと、ふたりは相対性理論+渋谷慶一郎『アワーミュージック』に収録の「BLUE」を演奏。やくしまるの「おやすみなさい」という言葉とともに、BLUE NIGHTは終了となった。これからの日本の音楽シーンを担うふたりのクリエイターが『BLUE』という共通項で繋がれ、この作品にある終末感ではなく、生命力に転化させこれからの若い世代に今作のスピリットを伝えていくきっかけになったことだろう『BLUE NIGHT』は鬱屈した世情を吹き飛ばす、極めて開放感に溢れた一夜となった。