Playing Piano with Speakers for Reverbs Only

2015

 

PLACE/DATE:
スパイラルホール(東京・青山)
 東京都港区南青山5−6−23 スパイラル3F
2015年12月26日(土)
18:00開場 19:00開演

 

CREDIT:
ピアノ:渋谷慶一郎(ATAK)
音響:金森祥之(Oasis Sound Design Inc.)
照明:髙田政義(RYU Inc.)

 

TICKET:
前売 S席7,000円/A席5,000円/P席3,000円
当日 S席8,500円/A席6,500円/P席4,500円
※音響および機材配置について協議の末、S席を20席と、P席を40席追加いたしました。
(既にチケットをご購入済みの方の変更はお受けできませんので、ご了承くださいませ)
※前売券が完売した場合、当日券の発売はありません。
(販売終了)チケット販売ページ

 

COMMENTS:
Playing Piano with Speakers for Reverbs Only

このコンサート「Playing Piano with Speakers for Reverbs Only」は 2015年9月に行われた完全ノンPA、アンプラグドのピアノソロコンサート「Playing Piano with No Speakers」のバージョンとして考えられた。 スピーカーを使ったピアノソロのコンサートはピアニスト自身がサウンドチェックを出来ないという弱点がある。これは当たり前の話なのだが、リハーサルでピアノを弾きながら移動することは出来ないので、自分が弾いている音を会場の他の場所でチェックすることは出来ない。しかし、これが僕には大きなストレスだった。「Playing Piano with No Speakers」 ではそれに対して「スピーカー、マイクを一切使わないピアノの生音だけのアンプラグドなコンサートを行う」、つまりそこにあるピアノを演奏し、その生音を一切の拡張ナシにそのまま聴かせるという極限までシンプルなセッティングの中で、曲間もMCもアンコールも全て取り払って演奏してみた。実際にそのコンサートでは自分の指が弾いているピアノの音とホールの残響だけが演奏中も常に生々しく聴こえて、それまでのピアノソロのコンサートとは異なる感触と手応えがあった。

そのときに思ったのは、ピアノの生音はそのままに、残響のみをコントロールすることでピアノと空間の関係を新しく作ることができるのではないかということだった。弾いているピアノの音自体はスピーカーで拡張することなく、残響成分のみを様々なサンプリング・リバーブを使って変容させ、空間配置した 16チャンネルのスピーカーから再生する。言わばダブミックスのディレイのようにサンプリング・リバーブをピアノに対して使うのだが、元のピアノの音はあくまでも生音のままのほうが良いのでスピーカーで拡張はしない。これは想像上ではベストなセッティングで、現実には存在しない教会でピアノを弾いているようなイメージが僕の中には出来ていた。

結果的にこの試みは成功した。演奏はモニタースピーカーを使うことなしに最上に自然な残響の中で水の中を泳ぐように続き、会場は天井からピアノの音が降ってくるようで思わず上を見ながら陶然としたという感想が多数寄せられた。サウンドエンジニアリングはTHE ENDの国内、国外公演をはじめ数年の僕のコンサー トPAを数多く手がけ、音響の志向性や好みを熟知している金森祥之さんを迎えて、これまで存在しなかったピアノと空間の関係を作れたと思う。このフォーマットは今後も更新しながら使い続けたいと思った。

また視覚的な情報は極限まで減らして暗闇と光の境界を作ることで演奏と聴取の集中度は驚異的に上がる。2年前のスパイラルホールでのコンサートでも照明を担当して頂いた高田政義さんに効果としての照明ではなく、ピアノの音と空間に対して光をどうするか考えて欲しいとお願いした。ひとつのピアノとひとつの光、空間の残響、この要素のみでこのコンサートは構成された。繰り返しになるがピアノの音はスピーカーで拡張しない。ただ、聴こえない音に耳をそば立てるような懐かしい緊張感を僕は好まない。なのでホールに対して十分な音量を確保できるピアノが必要だと考えてスタインウェイの Model-D というコンサートグラン ドを用意することにした。2年前にスパイラルホールで使用したピアノはエレベーターで 搬入できるが、生音のみのコンサートで使うには明らかに音量が足りなかった。スタインウェイのModel-Dは長さ274cmもあるフルコンサートのグランドピアノなので、当日会場脇の道路からクレーンで吊って搬入することになった。宙に昇るピアノ。偶然なのだが、これは僕の新しいプロジェクトとも一致した。

渋谷慶一郎

主催:ATAK
協力:Takagi Klavier Inc.
会場協力:株式会社ワコールアートセンター

 

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