Android Opera Scary Beauty
アンドロイド・オペラ『Scary Beauty』とは、人間のオーケストラを自ら指揮し自ら歌う世界初のアンドロイドによるオペラ作品である。アンドロイドは人間のオーケストラを指揮し、それを伴奏に自ら歌う。演奏に際した音楽全体のテンポや強弱はアンドロイドが自律的に決定し、人間はそれについていくことしかできない。これは宿命的に加速する「自らが生み出したテクノロジーに従属することでしか生きていけない人間」の縮図を端的にみせるオペラであり、人間とテクノロジーの関係性の過渡的状況のメタファーでもある。
作曲とピアノを渋谷慶一郎が担当、実際の演奏の際に起こるであろう人間の想像を超えた急激なテンポや強弱の変化、それに伴う歌唱表現の極度な振れ幅は全てアンドロイドが自ら決定し、作曲された音楽作品の新たな可能性を引き出す場合もあれば、破壊する可能性もはらみつつ音楽は進む。
日時:2022年11月15日 7:00pm
会場:新国立新美術館
- M0
Opening
- M1
Scary Beauty
- Interval
Speech by Alter4
- M2
The Decay of the Angels
- Interval
Improvisation between Shibuya’s piano + Alter4
- M3
Midnight Swan
- Composition, Concept, Direction, Electronics
Keiichiro Shibuya
- Vocals
Alter4
Orchestras
- Android Programming
Shintaro Imai
- Sound
Yuki Suzuki
- Lighting
Wataru Kawasaki
- Visual
Kotaro Konishi
- Stage Manager
Kazuya Kushimoto, So Ozaki
- Project/Production Manager
Natsumi Matsumoto
- Production
ATAK
Android – Alter4
Belonging to Osaka University of Arts – Art Science Department
Android and Music Science Laboratory (AMSL)
- Design supervised
Hiroshi Ishiguro
- Music supervised
Keiichiro Shibuya
- Programming
Shintaro Imai
- Pedestal design
Kazuyo Sejima & Associates
11月15日、国立新美術館で開催された「FORWARDISM BMW THE SEVEN Art Museum」の「EXCLUSIVE VIP PARTY」にて、アンドロイドオペラを披露。
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Processed with VSCO with fp8 preset
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- M0
Opening
- M1
Scary Beauty
- Interval
Speech by Alter4
- M2
The Decay of the Angels
- Interval
Improvisation between Shibuya’s piano + Alter4
- M3
Midnight Swan
- Composition, Concept, Direction, Electronics
Keiichiro Shibuya
- Vocals
Alter4
Orchestras
- Android Programming
Shintaro Imai
- Sound
Yuki Suzuki
- Lighting
Wataru Kawasaki
- Visual
Kotaro Konishi
- Stage Manager
Kazuya Kushimoto, So Ozaki
- Project/Production Manager
Natsumi Matsumoto
- Production
ATAK
Android – Alter4
Belonging to Osaka University of Arts – Art Science Department
Android and Music Science Laboratory (AMSL)
- Design supervised
Hiroshi Ishiguro
- Music supervised
Keiichiro Shibuya
- Programming
Shintaro Imai
- Pedestal design
Kazuyo Sejima & Associates
日時:2021/10/16(土)
会場:名古屋大学
- コンセプト、ピアノ、エレクトロニクス
渋谷慶一郎
- ヴォーカル
Alter3
- 指揮
川島素晴
- オーケストラ演奏
名古屋フィルハーモニー交響楽団
- アンドロイドプログラミング
今井慎太郎、池上高志
- 特別協力
名古屋大学工学研究科准教授 小川浩平
- 照明
藤本隆行(Kinsei R&D)
- 音響
金森祥之、松村宗、工藤優、池田崚平(有限会社 オアシス)
- 映像
小西小多郎
- 配信
鈴木勇気(有限会社 オアシス)、藤前英哲、堀川智世、角谷心真
- テクニカルアシスタント
ジョンスミス、山城 柚季
- 舞台監督
尾崎聡、串本和也
- 制作
松本七都美(ATAK)
- 特別協力
国立音楽大学
- 照明機材協力
パイフォトニクス株式会社
- 「オルタ」シリーズ共同研究
石黒浩、小川浩平、池上高志、土井樹
- オルタ3ソフトウェア設計・開発
今井慎太郎、池上高志
- オルタ3シミュレーター開発
株式会社ミクシィ
- オルタ3提供
株式会社ミクシィ
- 特別協力
東京大学、大阪大学、国立音楽大学、株式会社ミクシィ、株式会社ワーナーミュージック・ジャパン、株式会社オルタナティヴ・マシン
名古屋大学150周年記念イベント、アンドロイドと名古屋フィルハーモニー交響楽団の初共演。
渋谷慶一郎 アンドロイド・オペラ『Scary Beauty』
<アフタートーク>
演奏後、渋谷慶一郎(音楽家)×小川浩平(研究者)×川島素晴(作曲家、指揮者)×今井慎太郎(コンピュータ音楽家)×池上高志(研究者)によるアフタートークを実施
アフタートークコーディネーター:名古屋大学副総長 大野欽司
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- コンセプト、ピアノ、エレクトロニクス
渋谷慶一郎
- ヴォーカル
Alter3
- 指揮
川島素晴
- オーケストラ演奏
名古屋フィルハーモニー交響楽団
- アンドロイドプログラミング
今井慎太郎、池上高志
- 特別協力
名古屋大学工学研究科准教授 小川浩平
- 照明
藤本隆行(Kinsei R&D)
- 音響
金森祥之、松村宗、工藤優、池田崚平(有限会社 オアシス)
- 映像
小西小多郎
- 配信
鈴木勇気(有限会社 オアシス)、藤前英哲、堀川智世、角谷心真
- テクニカルアシスタント
ジョンスミス、山城 柚季
- 舞台監督
尾崎聡、串本和也
- 制作
松本七都美(ATAK)
- 特別協力
国立音楽大学
- 照明機材協力
パイフォトニクス株式会社
- 「オルタ」シリーズ共同研究
石黒浩、小川浩平、池上高志、土井樹
- オルタ3ソフトウェア設計・開発
今井慎太郎、池上高志
- オルタ3シミュレーター開発
株式会社ミクシィ
- オルタ3提供
株式会社ミクシィ
- 特別協力
東京大学、大阪大学、国立音楽大学、株式会社ミクシィ、株式会社ワーナーミュージック・ジャパン、株式会社オルタナティヴ・マシン
日付:2020年1月30日
会場:Sharjah Art Foundation, UAE
Inter-Resonance: Inter-Organics Japanese Performance and Sound Art
- M1
The Third Mind
- M2
Introduction
- M3
Scary Beauty
- M4
The Decay of the Angel
- M5
On Certainty
- コンセプト、ディレクション、作曲、ピアノ
渋谷慶一郎
- ヴォーカル、指揮
オルタ3 (Supported by mixi, Inc.)
- オーケストラ
NSO Symphony Orchestra (UAE)
- システムアーキテクト・エレクトロニクス
ことぶき光
- 「オルタ」シリーズ共同研究
石黒浩、小川浩平、池上高志、土井樹
- オルタ3ソフトウェア設計・開発
升森敦士、丸山典宏、
株式会社オルタナディヴ・マシン
- オルタ3シュミレーター開発
株式会社ミクシィ
- オルタ3パフォーマンス制御・開発
johnsmith
- 照明
藤本隆行
- 音響
金森祥之
- 舞台監督
尾崎聡、串本和也
- 制作
松本七都美(ATAK)
- プロデュース
株式会社ワーナーミュージック・ジャパン
- 特別協力
大阪大学石黒研究室、東京大学池上研究室、日本科学未来館、株式会社オルタナディヴ・マシン、株式会社ミクシィ
本フェスティバルは、長谷川祐子氏(東京都現代美術館参事)がキュレーションを務め、自然界と物質性の新たな関係性を彷彿させるパフォーマンスアート及びサウンド・インスタレーションに焦点を当て、シャルジャの様々な場所で作品を発表し、人間と非人間の相互関係における日本ならではのアニミズムの哲学を体現。
アンドロイド・オペラ『Scary Beauty』の中東初公演は、同フェスティバルのトリとして昨年2019年の9月に新設されたばかりのSharjah Performing Arts Academy(シャルジャ・パフォーミング・アーツ・アカデミー)にて、現地のオーケストラNSO Symphony Orchestra(UAE)とのコラボレーションによって実現した。
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- M1
The Third Mind
- M2
Introduction
- M3
Scary Beauty
- M4
The Decay of the Angel
- M5
On Certainty
- コンセプト、ディレクション、作曲、ピアノ
渋谷慶一郎
- ヴォーカル、指揮
オルタ3 (Supported by mixi, Inc.)
- オーケストラ
NSO Symphony Orchestra (UAE)
- システムアーキテクト・エレクトロニクス
ことぶき光
- 「オルタ」シリーズ共同研究
石黒浩、小川浩平、池上高志、土井樹
- オルタ3ソフトウェア設計・開発
升森敦士、丸山典宏、
株式会社オルタナディヴ・マシン
- オルタ3シュミレーター開発
株式会社ミクシィ
- オルタ3パフォーマンス制御・開発
johnsmith
- 照明
藤本隆行
- 音響
金森祥之
- 舞台監督
尾崎聡、串本和也
- 制作
松本七都美(ATAK)
- プロデュース
株式会社ワーナーミュージック・ジャパン
- 特別協力
大阪大学石黒研究室、東京大学池上研究室、日本科学未来館、株式会社オルタナディヴ・マシン、株式会社ミクシィ
日時:2019年3月13日(水) 20:00開演
会場:Robert-Schumann-Saal, Düsseldorf, Germany
- コンセプト・作曲・ディレクション・ピアノ
渋谷慶一郎
- ヴォーカル・指揮
オルタ3(Powered by mixi, Inc.)
- オーケストラ演奏
The Japanese Philharmonic Düsseldorf
- システムアーキテクト・エレクトロニクス
ことぶき光
- 「オルタ」シリーズ共同研究
石黒浩、小川浩平、池上高志、土井樹
- オルタ3ソフトウェア設計・開発
升森敦士、丸山典宏、株式会社オルタナディヴ・マシン
- オルタ3シュミレーター開発
株式会社ミクシィ
- オルタ3パフォーマンス制御・開発
神田川雙陽(劇団粋雅堂)
- 照明
藤本隆行 (Kinsei R&D)
- 音響
金森祥之、工藤優(有限会社 オアシス)
- 映像
吉田佳弘
- テクニカルアシスタント
ジョンスミス
- サポートプログラミング
百々政幸、山口慎一
- 舞台監督
尾崎聡
- 演奏アドバイザー
板倉康明、川島素晴
- スコア作成
金田望、鈴木理
- ボーカロイドサポート
ジュスティーヌ・エマール
- 広報
高見直樹(株式会社ワーナーミュージック・ジャパン)
- 制作
大木奈緒美、神田圭美、吉川佳菜
- プロデューサー
阿部一直、小川滋
- エグゼクティヴプロデューサー
増井健仁(株式会社ワーナーミュージック・ジャパン)
- プロデュース
株式会社ワーナーミュージック・ジャパン/アタック・トーキョー株式会社
- 特別協力
大阪大学石黒研究室、東京大学池上研究室、日本科学未来館、株式会社オルタナディヴ・マシン、株式会社ミクシィ
- 協力
株式会社イニット・インク、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社、パイフォト二クス株式会社
- スペシャル サンクス
木村弘毅(株式会社ミクシィ)、内田まほろ
アンドロイド・オペラ「Scary Beauty」が、現地時間の3月13日にドイツ・デュッセルドルフのRobert-Schumann-Saalにてヨーロッパ初演を実施。本作は人工知能搭載のアンドロイド・オルタ3が人間のオーケストラを指揮し、自ら歌うというオペラ作品で、現地で開催されるイベント「Hi, Robot! Mensch Maschine Festival」のオープニングを飾る。なおオルタ3が海外の公演に用いられるのは今回が初。公演後、オルタ3はドイツのNRW-Forumで3月15日から5月5日まで行われる展示会「Korperwende」に展示された。
- コンセプト・作曲・ディレクション・ピアノ
渋谷慶一郎
- ヴォーカル・指揮
オルタ3(Powered by mixi, Inc.)
- オーケストラ演奏
The Japanese Philharmonic Düsseldorf
- システムアーキテクト・エレクトロニクス
ことぶき光
- 「オルタ」シリーズ共同研究
石黒浩、小川浩平、池上高志、土井樹
- オルタ3ソフトウェア設計・開発
升森敦士、丸山典宏、株式会社オルタナディヴ・マシン
- オルタ3シュミレーター開発
株式会社ミクシィ
- オルタ3パフォーマンス制御・開発
神田川雙陽(劇団粋雅堂)
- 照明
藤本隆行 (Kinsei R&D)
- 音響
金森祥之、工藤優(有限会社 オアシス)
- 映像
吉田佳弘
- テクニカルアシスタント
ジョンスミス
- サポートプログラミング
百々政幸、山口慎一
- 舞台監督
尾崎聡
- 演奏アドバイザー
板倉康明、川島素晴
- スコア作成
金田望、鈴木理
- ボーカロイドサポート
ジュスティーヌ・エマール
- 広報
高見直樹(株式会社ワーナーミュージック・ジャパン)
- 制作
大木奈緒美、神田圭美、吉川佳菜
- プロデューサー
阿部一直、小川滋
- エグゼクティヴプロデューサー
増井健仁(株式会社ワーナーミュージック・ジャパン)
- プロデュース
株式会社ワーナーミュージック・ジャパン/アタック・トーキョー株式会社
- 特別協力
大阪大学石黒研究室、東京大学池上研究室、日本科学未来館、株式会社オルタナディヴ・マシン、株式会社ミクシィ
- 協力
株式会社イニット・インク、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社、パイフォト二クス株式会社
- スペシャル サンクス
木村弘毅(株式会社ミクシィ)、内田まほろ
日時:2018年7月22日(日) 20:30開演
- コンセプト、作曲、ディレクション、ピアノ
渋谷慶一郎
- ヴォーカル、指揮
オルタ2
- オーケストラ演奏
国立音楽大学学生・卒業生有志オーケストラ
- アンドロイド開発、共同研究
石黒浩、小川浩平(アンドロイド制作)、池上高志、土井樹(アンドロイドプログラミング)
- システムアーキテクト・エレクトロニクス
ことぶき光
- サポートプログラミング
百々政幸、山口慎一
- 照明
藤本隆行
- 音響
金森祥之
- 映像
涌井智仁
- 舞台監督
尾崎聡
- テクニカルアシスタント
ジョンスミス
- オーケストラ演奏統括
川島素晴
- オーケストラ演奏指導
板倉康明
- スコア作成
鈴木理
- サウンドプログラムサポート
宮田大地
- ボーカロイドサポート
ジュスティーヌ・エマール
- スーパーバイザー
増井健仁(株式会社ワーナーミュージック・ジャパン)
- 制作
大木奈緒美、神田圭美、中村桃子
- 主催
ALIFE Lab.
- 共催
日本科学未来館
- 特別協力
大阪大学石黒研究室、東京大学池上研究室、株式会社オルタナディヴ・マシン、キャノンマーケティングジャパン株式会社
- 協力
株式会社イノベーター・ジャパン、株式会社ワーナーミュージック・ジャパン、株式会社ヴァリアス・ディメンションズ、株式会社冬寂、株式会社ヤマハミュージックジャパン、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社、NATIVE INSTRUMENTS JAPAN株式会社、株式会社ハイ・レゾリューション、カシオ計算機株式会社、バイフォトニクス株式会社、有限会社タマ・テック・ラボ、Studio ATLAS
- 協賛
株式会社オレンジ
- 助成
公益財団法人東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京
本作品は、昨年2017年にオーストラリアで発表されたアンドロイド・オペラ『Scary Beauty』をプロトタイプとした、新しいバージョンでの新作アンドロイド・オペラである。世界の人工生命研究者が集うALIFE 2018(人工生命国際学会)のパブリックプログラムとして日本科学未来館(東京・お台場)で発表された。世界的なロボット学者である石黒浩氏(大阪大学教授)のアンドロイド「オルタ2」に同じく世界的な人工生命の研究者である池上高志氏(東京大学教授)によるAIの自律的運動プログラムが搭載されたとき、このプロジェクトは始動した。世界のロボット、ALife(人工生命)を代表する石黒、池上という二人の際立った知性と渋谷の音楽が拮抗することで音楽と我々=人間、アンドロイドの関係は激しく振幅し揺れ動き、更新されていく。
歌われるテクストは現代フランスを代表する小説家であるミッシェル・ウエルベックによる奇妙なラブソング、ウィリアム・バロウズのカットアップをディープラーニングでさらに切り刻んだテクスト・リーディングといった極めて危うく鋭い知性、言説の抜粋から成っている。
また、今回の公演に発表される新作として、20世紀を代表する哲学者であるルートヴィッヒ・ヴィトゲンシュタインの遺作である「確実性の問題」の抜粋をWord2Vec(文章内における各単語の意味をベクトル表現化するプログラム)を用いて解析、各単語を3次元ベクトルに変換し、得られたベクトルの各成分を音高、音価、音の強弱に対応させることで、テクストから音楽への自動作曲を用いた作品も発表される。
そして、これらの言わば「人類最後の7つの歌」をアンドロイドが歌うことで恐怖と感動が入り混じった「新たな感情」が生成されるだろう。ここでは単一の物語を時間軸に沿って展開していくという構成をとっていない。そして、近い未来にはリズムやテンポだけではなく、演奏箇所の選択やカットアップもアンドロイド自身がリアルタイムで行い、別々の音楽と物語が偶発的に断片化されては接合されていく、新しいアレンジ/リミックスによるオペラが可能になるだろう。
アーティストテクスト
僕たちは見つけにくく忘れやすい。
-Scary Beautyの世界初演について-
率直に言って今回の公演の準備、制作は困難を極めた。というかこれは実現できるのか?と思う瞬間が何度もあった。困難の理由はいくつもある。
空気駆動のアンドロイドは指揮のような機敏な動きに向かない。オーケストラと指揮者の間には習慣的な約束がいくつもあるが、それをアンドロイドに学習させても人間の指揮者の劣化版にしかならない。そもそもオーケストラは大人数の演奏者から成っていて少なくない数のリハーサルを必要とする。これがもしコンピュータ・ミュージックだったら直接アンドロイドと接続して様々な信号を送り相互に操作することができる。今回の場合は僕がコンピュータでシュミレーションして作曲、オーケストレーションしたデータを楽譜に置き換え、オーケストラ団員に渡しリハーサルを反映して細かく修正するというプロセスが続いた。
では、なぜこんな困難を自ら設定したのか?
アンドロイドのプログラム開発を担当した池上高志と未来館のリハーサルの帰りに話していたら、彼は2013年のTHE ENDのパリ公演の後、僕がラジオで次はアンドロイドでオペラを作ると話していたのを覚えていると言っていた。確かにこのプロジェクトの発想の元は2013年のパリに遡り、何度も流れそうになりつつこの5年間、僕は虎視眈々と実現のタイミングを狙っていた。粘り強く、という言葉は全く相応しない。アンドロイド・オペラは僕の体の一部になって、考えを巡らせリサーチも続け、ほとんどの読書はアンドロイドが歌うテクストを探すことに紐づいていった。
困難な問題設定は解決した時には作品の力となる。これはテクノロジーオリエンテッドな問題設定をあえてしないということでもある。いまできることから発想しない。想像力の範囲が現状のテクノロジーに依拠しているようでは作品も僕も生き残れない。
しかしアンドロイドによる指揮の開発とオーケストラの協働は困難を極めた。プログラムは何度も開発を繰り返し幾重にもレイヤーされ、修正してというプロセスは「人は何をリズムと感じるか?心拍と感じるか?」という問題に辿り着いた。
池上研究室の土井樹と現代音楽家の川島素晴、僕と池上、ことぶき光は未来館に泊まり込み、アンドロイド相手に無人のリハーサルを繰り返した。その結果、「アンドロイドの指揮の腕の動きだけに注力するのではなく、人間の呼吸のような肩、腰の上下運動の反復を与える」ことがオーケストラとアンドロイドによる指揮のコミュニケーションを格段に容易にするという結論に到達した。実際、その後のリハーサルではオーケストラメンバーが「この指揮ならイヤホンでクリック聴かなくてもいけるかも」と言いながらイヤホンを外してアンドロイドの指揮だけを見て格段と自由に演奏するメンバーが続出した。
これは普遍的な問題でもある。つまり、人間がアンドロイドに対して出来るのはプログラムしたり自律性を与えたりすることだけではない。人間のオーケストラはアンドロイドと一緒に演奏する過程で人間のそれとは確実に違う指揮から、いかに一緒に演奏することが可能かを探り、発見することもできる。このことを僕たちは忘れやすい。
アンドロイドの指揮に呼応して咀嚼して演奏するオーケストラ。そこには最初に僕がつけたタイトル「Scary Beauty」とは全く別な意味での”Scary Beauty”=奇妙な美しさが生まれていた。このとき、人間とアンドロイドの距離は少し近づいた気がする。
そしてこれはオーケストラの演奏統括を担当した川島が最初にオーケストラメンバーにこのプロジェクトを話したときに若い団員から言われた言葉、「どうやって息をしていない指揮者とわたしたちは演奏したらいいんですか?」に一周回って帰結する。僕たちは呼吸をして影響し合う。こんな当たり前なことを僕たちは見つけにくく忘れやすい。
その後に制作した本公演のための新作「On Certainty」(ヴィトゲンシュタインのテクストによる「確実性の問題」)には、コンピュータで作った人間の呼吸音を無限反復して入れることにした。人工の呼吸を見れるだけではなく聴けるように。それが人間とアンドロイドに少しの自由をもたらすように。
追記:
この公演は後年、語り継がれるくらい荒唐無稽なものだったと思う。フェスティバルでもなければ委嘱でもなければスポンサー公演でもなく、ただ一体のアンドロイドの周りに集まって協働し無理難題を徹底的に探求するという、この狂気をすべての人に。そして芸術とはこういうものだと思う。
この狂気と限界を一緒に超えてくれた制作スタッフ全員、アンドロイドとオーケストラに本当に感謝したい。
2018.7.18
渋谷慶一郎
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1/1
- コンセプト、作曲、ディレクション、ピアノ
渋谷慶一郎
- ヴォーカル、指揮
オルタ2
- オーケストラ演奏
国立音楽大学学生・卒業生有志オーケストラ
- アンドロイド開発、共同研究
石黒浩、小川浩平(アンドロイド制作)、池上高志、土井樹(アンドロイドプログラミング)
- システムアーキテクト・エレクトロニクス
ことぶき光
- サポートプログラミング
百々政幸、山口慎一
- 照明
藤本隆行
- 音響
金森祥之
- 映像
涌井智仁
- 舞台監督
尾崎聡
- テクニカルアシスタント
ジョンスミス
- オーケストラ演奏統括
川島素晴
- オーケストラ演奏指導
板倉康明
- スコア作成
鈴木理
- サウンドプログラムサポート
宮田大地
- ボーカロイドサポート
ジュスティーヌ・エマール
- スーパーバイザー
増井健仁(株式会社ワーナーミュージック・ジャパン)
- 制作
大木奈緒美、神田圭美、中村桃子
- 主催
ALIFE Lab.
- 共催
日本科学未来館
- 特別協力
大阪大学石黒研究室、東京大学池上研究室、株式会社オルタナディヴ・マシン、キャノンマーケティングジャパン株式会社
- 協力
株式会社イノベーター・ジャパン、株式会社ワーナーミュージック・ジャパン、株式会社ヴァリアス・ディメンションズ、株式会社冬寂、株式会社ヤマハミュージックジャパン、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社、NATIVE INSTRUMENTS JAPAN株式会社、株式会社ハイ・レゾリューション、カシオ計算機株式会社、バイフォトニクス株式会社、有限会社タマ・テック・ラボ、Studio ATLAS
- 協賛
株式会社オレンジ
- 助成
公益財団法人東京都歴史文化財団アーツカウンシル東京
日時:2017年9月30日、10月1日
会場:オーストラリア・アデレード
Space Theatre Adelaide Festival Centre
- ARTIST
Keiichiro Shibuya + Skelton
9月30日と10月1日の2日間、オーストラリアの都市アデレードで開催されるアートフェスティバル「オズアジア・フェスティバル」にて、渋谷慶一郎が作曲、指揮、ピアノを担当し、アンドロイドのソロ・ボーカリストとオーケストラの共演による新作『Scary Beauty』のプロトタイプ上演が行われた。渋谷としては、ボーカロイド・オペラ『THE END』(2012〜)以来、5年ぶりとなる、待望の新作オペラ作品の発表となる。
『Scary Beauty』(「不気味な美しさ」の意)は、世界的なロボット研究者である石黒浩氏によって開発され、複雑系研究者の池上高志氏との共同研究より人間に近い運動の自由度を獲得したヒューマノイド・アンドロイド「Skelton (スケルトン)」が、人間のオーケストラ演奏をバックに、歌い演じる新作モノ・オペラである。
楽曲は、コラージュされたテキストによる3曲からなる。これらのテキストは、人類が絶滅した後の地上でアンドロイドが歌い続ける奇妙な情景を想定して選ばれている。男性でも女性でもない中性的な存在であるアンドロイドが、コンピュータで生成された人工合成音声で、10人編成のクラシカルな室内オーケストラと共演する形で歌っていく。
また、アンドロイドの衣装をデザイナー・阿倍千登勢を擁する世界的なファッションブランド、sacai(サカイ)が担当することも大きな注目を集めている。
まるで人間のような滑らかな動きから人間ではありえない奇妙な動きへ。人間の声では出せない奇妙な音声で歌い演じるアンドロイドは我々に何を感じさせ、考えさせるのだろうか。ここには様々な想像を超えた要素の共存とコントラストが混在しており、聴衆は恐怖と感動の振幅を体験することになる。
ソロ・ヴォーカルを担当するSkeltonの動作、運動は事前にプログラムされたものではなく、オーケストラの演奏に反応してリアルタイムで生成される。生成には、我々の脳内のニューロンを模したモデルから構成されたスパイキングニューラルネットワーク(Spiking neural network)を用いている。ニューラルネットワークの出力は、アンドロイドの「ふるまい」として表現され、それは周期的なものからカオティックなものまで多様なものとなるが、それらのトリガー(きっかけ)は人間のオーケストラによってもたらされる。つまりこれはアンドロイドと人間による、今までに存在しえなかったアンサンブルによる演奏といえるだろう。
共演オーケストラは、オーストラリアの最も注目される現代音楽アンサンブルとして領域横断的な幅広い活動を展開するAustralian Art Orchestra (AAO:オーストラリアン・アート・オーケストラ)。作曲と指揮、ピアノを渋谷慶一郎が担当する。
舞台演出は照明を藤本隆之が、映像を涌井智仁が担当。LEDを駆使した照明と舞台背後の2面大型スクリーン上にリアルタイム中継映像とあらかじめ制作、編集された映像が再構成されプロジェクションされる。
また10月3日、4日には、2012年の初演以来、世界中で公演を重ねているボーカロイド・オペラ『THE END』も同フェスティバルで披露されることが決定しており、渋谷を中心とした両公演はフェスティバルのメインアクトとなっている。(同フェスティバルは毎年オーストラリアとアジアの文化交流のためのカルチャー・フェスティバルで、3週間にわたり、映画、ダンス、エキシビションを楽しむことができる。)
-
1/1
- ARTIST
Keiichiro Shibuya + Skelton