MASSIVE LIFE FLOW

2011-

 

PLACE/DATE:
ギャラリーここ
2011年4月17日 – 26日(25日休廊)

 

CREDIT:
渋谷慶一郎

音楽家。東京芸術大学作曲科卒業。2002年に音楽レーベルATAKを設立、国内外の先鋭的な電子音響作品をCDリリース。代表作に「ATAK000+」、「ATAK010 filmachine phonics」など。2009年、初のピアノソロ・アルバム「ATAK015 for maria」など。多数の映画音楽を担当する一方、国内外でマルチチャンネルによるサウンドインスタレーションを発表、コンサートも行うなど多彩な活動を展開している。思想家・小説家の東浩紀とのコラボレーション作品「イニシエーション 渋谷慶一郎+東裕紀feat.初音ミク」を発売。2012年にはYCAM(山口情報芸術センター)にてオペラ「THE END」を発表。2013年5月23日、24日にはBunkamuraオーチャードホールで「THE END」東京公演、11月13日、15日にはフランス・パリにて「THE END」パリ公演を開催する。

 

重松象平(空間構成)

建築家。1973年福岡県生まれ。設計事務所OMAのパートナー、NY事務所代表。主な作品はCCTV(中国中央電視台)新社屋、深圳証券取引所本社屋、プラダ巡回展「ウェイスト・ダウン」、コーネル大学建築芸術学部新校舎、ケベック国立美術館新館など。マリナ・アブラモビッチの新しいパフォーマンススペースや、蔡國強のNYスタジオ兼アトリエなど、アーティストとのコラボレーションも進行中。 http://oma.eu/home

 

鈴木心(撮影/映像制作)

写真家。広告、雑誌の制作をする傍ら自身の作品制作を行う。作品集に『写真』(2008)、『高良健吾 海 鈴木心』(2010)などがある。自身のウェブサイト(suzukishin.jp)では毎日撮影され更新された写真の蓄積6万点を自由にダウンロードする事ができる。「写真を仕事にする」ワークショップ・写真会議を主催。 http://suzukishin.jp

 

ムラカミカイエ(映像制作)

SIMONE代表。アートディレクター/クリエイティブ・ディレクター。株式会社三宅デザイン事務所で三宅一生に師事。アート・ディレクターとして「ISSEY MIYAKE」等のプロジェクトを指揮。2003年ブランディングカンパニー、SIMONE INC.設立。国内外多数のファッション、ビューティ、ラグジュアリーブランドのクリエイティブディレクション、コンサルティングを手掛ける。デジタルメディアに精通したマーケティングロジックと洗練されたアートディレクションの融合は他業種からも評価が高い。NY ADC,GOOD DESIGN AWARD他受賞。文化事業を通して災害復興に貢献するSAVEJAPAN! PROJECT発起人。 http://www.ilovesimone.com

 

Audio Tech: Shohei Kanamori (oasis), Miki Nakamura
Special Thanks: Toshiyuki Tokutake (T&HY), evala

Curated by Jun Ishida, Koko Hatafuku

 

CONCEPT:
これは渋谷慶一郎が音楽を作る過程・行為そのものを一般公開、多角的にデータ化することを意図して企画された、従来とは異なる方法の新作インスタレーションです。
ギャラリー内には渋谷が使用するグランドピアノ、コンピュータ、スピーカー、キーボードなどが持ち込まれ、それらを建築家・重松象平が空間的に再構成することにより仮想にも現実にも存在しないアトリエが出現します。
そこで実際に渋谷慶一郎が9日間に渡り、作曲、演奏、リハーサル、ミーティングなど 「普段通りの」音楽制作・生活を行い、それらの過程をギャラリー空間、Ustreamで全て公開します。複数の定点カメラで捉えられた作曲する指や鍵盤をギャラリーを訪れた鑑賞者は拡大されたプロジェクションによって、Ustreamではリアルタイムで、その様子を観ることも聴くことも可能となります。これは鑑賞と監視の境界の中で行われるという意味で、現在の創造行為の縮図です。かつて行われたことがない「音楽の公開制作」を鑑賞/監視することで、鬼才が音楽を立ち上げる時間を共有してください。
(ギャラリーここのサイトより転載、一部改訂)

 

また、このとき撮影・USTREAMにて放映された映像を編集したDVD作品が、2014年にリリースされました。
ATAK021 MASSIVE LIFE FLOW

 

 

DESIGN CONCEPT:

重松象平

 

1:1
オープニング展では「ここ」をアートギャラリーとラウンジという機能別に二等分しました。今回もアーティストのワークスペースとオーディエンス(客席)を半々とします。通常の音楽会では音楽家の領域と客席の比率は1:1ではありません。当たり前ですが、より多くの人に聞いてもらえるよう、客席のほうが大きな割合を占めます。ここでは敢えて半分半分にすることによって、音楽家と観客の双方がより濃密に互いの存在を感じとれることができるようにしたいと思いました。公開制作ということなので、演奏する側と鑑賞する側という単純な関係性の枠を超えて、「創作」に対する「観察」、「監視」、「記録」など、より幅広い関係性をつくりたいと考えたのです。空間的には二つの領域の間にハードなラインが引かれていますが、その明確な区切り方が逆に、視聴覚的には双方が複雑に交差している状況を際立たせています。

 

 

音を視覚化する

ここでは実際の音だけではなく、音楽家が音をつくっていくアクティビティやムーブメントも音と捉え、その動きが最大限にそして多次元に見えるようにしています。天井が鏡面になっているので、どこからでも音楽家の動きを見ることができます。通常の客席から見る視点とはまた別の視点をつくるということです。(ものを逆さまにしてみると至って違った発見があるものです。)コンピュータ、キーボード、ピアノ、ミキサーなどを操る手の動き、スケッチの内容など、普通ならば観察していても見えない動きまで見ることができます。そして音が空間に響いていくように、音楽家の動きが増幅されて、空間いっぱいに充満することになるのです。

 


シンクロする

ウェブでも「ここ」でのアクティビティと音を鑑賞できます。さらにウェブで流されている映像をシンクロしてギャラリー内に投影しています。カメラを通して見る音楽家の動きにはまた違った発見があるかもしれません。こうして実際の渋谷慶一郎、鏡面天井に映った渋谷慶一郎、デジタルな渋谷慶一郎が空間を占領し、観客は、渋谷慶一郎から音が生まれるときの動きを最大限に体験できるようになります。