for maria installation version

2009-

 

ARTIST: Keiichiro Shibuya + evala

 

PLACE/DATE:
山口情報芸術センター(YCAM) 中庭A・B
2009年10月1日 – 2010年6月6日

 

PROFILE:
渋谷慶一郎 + evala

実験的かつハイクオリティなリリースが世界的に注目を集めるレーベルATAKを牽引する存在である渋谷慶一郎とevala。複雑系研究者の池上高志(東京大学教授)との第三項音楽プロジェクトを提唱し、コンピュータミュージックの最先端を担っています。2006年には、YCAM滞在制作による立体音響インスタレーション「filmachine」を発表。この作品は、アルス・エレクトロニカ、デジタル・ミュージック部門でHonorary mentionを受賞し、その後ベルリンにて巡回展示もおこなっています。2009年には、ライブイベント「ATAK NIGHT4」のワールドツアーを展開するなど、その活動は国際的に注目され、影響力を広げ続けています。 今回、YCAMで発表する新作は、彼らにとって初めてのピアノを素材としたサウンドインスタレーションで、ビジュアルを伴わない5.1チャンネルによる完全にサウンドのみで構成される作品となります。

 

CONCEPT:
加工/解体/再構成〜空間に充満するピアノ
このインスタレーションは、音楽家の渋谷慶一郎によって作曲・演奏されたピアノソロによるCDアルバム「ATAK015 for maria」のサウンド・データの全て(全14トラック)を素材とし、渋谷とサウンド・アーティストのevalaによるコンピュータプログラムによって、<加工/解体/再構成>する音響作品です。音像は立体的な移動を伴い、複数の楽曲間に新たな関係やレイヤーを構築し直すことで、原曲とは異なった全く新しい音楽・音響が生成されていきます。
会場となるホワイエを挟んだ2つの中庭A・Bは、天井までの高い壁(ホリゾント)による特殊な音響特性を持ち、地下に設置された5.1(または5.1+2)チャンネルのスピーカーから音源が再生されます。中庭は、それぞれ異なる建築構造を持つため、A・Bに対して異なったプログラミングが施された音がインストールされます。

 

< 本作の構成について>
本作では、CDの128倍の解像度を持つDSDレコーディングによって、精緻に録音された渋谷自身のピアノ演奏(ベーゼンドルファー)を音源として使用しています。これらをCDフォーマット用に変換し、コンピュータプログラムによって、1トラックを異なるピッチに変化させ、1から10までのレイヤーを作成して多様に重ねることにより、加工/解体/再構成しています。
また、CDに収録された14トラックのうち、最大10トラックまでの断片が選択され、同時に重ねられていきます。コンピュータプログラムによるサウンド再生においては、ファイルデータの細部を注視する解析と感覚判断により、各々のファイルやレイヤーのランダムな組み合わせが取り入れられています。横長の空間特性を生かしたチャンネル間の音源移動が、巧妙に設計されており、それにより、空間に充満する音響は煙のような有機性を伴って生成変化し、2度と同じ形では再現しない無限の変化を生じるような空間表現を生み出します。原曲を想起するのが難しいほど、複雑多岐なプロセスによって展開されるため、来場者は常に新しい音楽/音響に出会えるようになっています。