ATAK006 yuji takahashi

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電子音楽作品によるフルアルバムとしては「翳り(1993)」以来12年ぶりとなる本作は、ライブでのみ発表されてきた2000年以降の最新作から’95年の傑作「雲輪舌260795(1995)」、’89年に発表されたカフカのテクストによる作曲者自身の朗読とコンピュータシステムによる「それとライラックを日向に(1989)」、1963年に作曲された電子音楽の処女作にして幻の音源とされていた自身25歳 (!)のテープ音楽「TIME」(真鍋博のアニメーション作品に提供した日本最初期の電子音楽作品の傑作)といった異なる時代の傑作を網羅した、最新作にして集大成、問題作にして最高傑作と言える豪華な内容です。
最新作を含め、いずれもリリースが待ち望まれながら今回が初音源化された作品のみであり、いずれもラディカルな方法論と硬質な音響に貫かれたこの作品は電子音響/サウンド・アートシーンのみならず現代音楽シーンにも大きな衝撃となること必至の1枚です。

16年前、高校生だった僕は有楽町の朝日ホールで「それとライラックを日向に」を聴いた。そのコンサートのことはよく覚えている。これは音楽なのか?テクストなのか?そのどちらでもないのか?では何なのか?という強烈な印象はしかし高橋悠治とは何か?という問いにも繋がる気がする。

僕は彼の最近のコンピュータによる作品をすごくいいなと思っていて、絶対にリリースするべきだと再三言っていた。実際、どこかヨーロッパのレーベルを紹介しようかなんて考えていた頃に、このCDの1曲目に収録されている「gs-portrait」を聴いて僕はそのCDをATAKで出したいと思った。
時間の輪は回る。僕はその曲が「それとライラックを日向に」に重なり繋がるのを感じてすごく嬉しかった。そしてアルバムの構成を決めていくうちに彼の電子音楽の処女作である「TIME(1963)」を収録することにもなった。
高橋悠治は42年前も高橋悠治だったという驚くべき事実がここにある。
自分のレーベルだからというのではなく、僕はこのアルバムは彼の最高傑作だと思っている。42年後に聴いてもきっと新しい。

渋谷慶一郎(ATAK)