2004 05 24

05 24

しかしこの前、mariaのお兄さんがmariaと同じ顔で
息子の祐也君に「そろそろ従兄弟が欲しいよな」という
非常に和風なことを言ってたので食らいました。

ATAK003発売3日目。売れ行きは好調。追加オーダが来てます。

で、スティルアップステイパについて、佐々木敦さんのex-musicより。

スティルアップステイパという、なんとも発音しにくい奇妙な
名前のバンドを知ったのは、もうかなり昔のことになる。
日本ではまったく知名度がなかった(それは今でもほとんど
変わっていないが)彼らのレコードを聴いてみようと思ったのは、
ザ・ハフラー・トリオの鬼才アンドリュー・マッケンジーによって
プロデュースされていたということもあったが、何といっても
アイスランドという馴染みのない国の出身であるということに、
いたく興味をそそられたのだった。
彼らのファースト・アルバムは1995年にドイツのヴェリー・
グッド・レコーズよりリリースされているが、この時点での
音楽性は、かつてのボアダムズのような、広い意味でのバンド・
フォーマットによるアバンギャルド&ストレンジ・サウンドだった。
しかしそれはその手の音としても、かなりのイカレぶりであり、
スティルアップステイパという名前は、僕の記憶庫の中に、しっかり
と残されることになった。

その後、どういう経緯でなのかは不明だが、日本のアヴァン・
コア・バンド、メルトバナナとコンタクトを取ってスプリット
10インチを発表したり、ザ・ハフラー・トリオとの共作を含む
何枚かのシングルをリリースしていたりしたが、オランダの
レーベル、コーム・プラスティックスから突然、リリースされた
CD”THE BEST PET POSSIBLE”で、彼らは劇的といっていい変貌を
遂げる。
そこではロック/バンド的な残滓は完全に消え去っており、
ミステリアスでスペーシーな音響工作が、全編を覆い尽くしていた
のだ。その後は自らのレーベルであるファイアー・インクを拠点に、
ストック・ハウゼン&ウォークマンやジム・オルーク、池田亮司
などと密接な協力関係を保ちながら、刺激的な作品をコンスタント
に発表しつつ、現在に至っている。

メンバー3人はオランダのデン・ハーグとアイスランドの
レイキャビクを往復しつつ、きわめてエネルギッシュな活動を
展開しており、世界各地のコンサート・イヴェントやフェスティバル
等に次々と出演を果たし、先だってはソニック・ユースのヨーロッパ・
ツアーのフロント・アクトにも抜擢されたという。

僕は自分が運営するレーベルmemeのコンピレーションに、
彼らからトラックを提供して貰った。
“AUDIBLE BY HAND” というタイトルのその曲はCDの冒頭に
据えられている。僅か6分ほどの間に恐ろしく多様なエレメント
が濃縮された、聴けば聴くほど興味深い電子音楽である。
現在のスティルアップステイパのサウンドは、きわめて複雑かつ
精密なテクスチャーで織り上げられた、オリジナリティ溢れる
エレクトロアコースティック・サウンドである。
パナソニックのようなウルトラ・ミニマルなテクノを彷彿とさせる
部分もあれば、コズミックなアンビエントを思わせる部分も、
フリーフォームの電子音響が激しくざわめいている部分もある。
それらは過去数十年の実験音楽と呼ばれるものの、非常に魅力的な
アマルガムとなっている。
彼らのリスナーとしてのセンスの鋭さは、スティルアップステイパ
以外にリリースしているアーティストたち──C・M・フォン・
ハウスウォルフ、ジム・オルーク、レイフ・エルグレンといった
名前を見れば一目瞭然だろう。実際にオランダで彼らと会ったこと
のある池田亮司氏によれば、3人のメンバーはいずれも大酒呑みの
やたらと陽気な連中だという。
ひとつのカテゴリーに決して安住しようとしない奔放な姿勢を持った
彼らが、今後ますます注目を集めていくことを、僕はひそかに期待
している。