2009 02 18

02 18

ATAK012 OLEVA Mika Vainioの発売日。
__
このアルバムはすごく時間がかかっていて、Mikaの生理的というよりも動物的な耳の良さと構成への意志、均衡している傑作で、僕が個人的に知っているからかもしれないけど
__
彼は日本で武満徹のBOXセット買って帰るくらい現代音楽の影響も強いし、同時にメタルもすごく詳しい。
__
僕のピアノソロのアルバムのコピー渡したら音足したり、一緒に何かやりたいっていうメールをくれたり
__
とにかく音楽の幅が広い人なので、音楽の成り立ちに関する情報密度が高い。今回のは全然ノイジーじゃない。すごく丁寧に作られている。
__
で、重要なのはそうした影響が全てあの鋭敏な耳からのものだということで、耳からin putされた多様性、豊穣さが手によってout putされるという極めて当たり前のことが極めて高いレベルで、しかしこれ以上なく自然に行われていて、
__
それは最終的に彼が選んでいるマスターがDATだということにも通低している。
__
彼が作った磨き抜かれたノイズ(とあえて呼ぼう)の組み合わせによってできた音楽は一切の編集や加工もなくDATに一発で落とされている。つまりベストテイクをDATに落としてそれがマスターとなりマスタリングされて、CDになるという極めてシンプルな行程がなのだが
__
このDAT特有の音色というのも含めて彼の音楽になっている。これは電子音楽に限っていえばPan sonicも含めて恐らく彼が最後の一人でになる可能性が高い。それが最も高いレベルで実現しているという意味でも僕はこの作品をアーカイヴしたいと思った。
__
つまりCDというメディアはその存在自体が明らかにカウントダウンに入っている。だから今後リリースするものはある種のアーカイヴ的な価値を持っていないと意味がないと思っている。なのでATAK012はDATマスターの究極という意味でもリリースしておくべき作品だと思った。
__
元々はSahkoというほぼ彼のプライベートレーベルと言ってもいいレーベルからリリースされていたものを、日本盤としてリリースしたいというオファーを受けたのが去年の春だった。
__
そしてmariaのことがあって半年以上かかってリリースされたこのアルバムはATAKの再始動のきっかけとなっている。
__
それはジャケットを見てもらえれば分かると思うけど、今までのタイポグラフィのみによる構成を止めたのは、何か変えなければ始められなかったからというのが僕にとっての真実だ。
__
僕はやはり僕にとって新しいことがしたい。それが僕の作品でなくても自分のレーベルの作品だったら。
__
そのときに思いついたのが、mariaのことがあったときに本当に親身になって心配してくれた写真家の新津保建秀さんがfor mariaのコンサートときにまるで事故のように偶然撮っておいたムジークエレクトロニクス・ガイザインのスピーカーの写真をどうしても使いたい、ということと
__
そもそも新津保さんはATAKのパッケージ、フライヤーを全てお願いしているGRAPHともつながりが深いので、新津保さんの写真とGRAPHの印刷技術のカッティングエッジをATAK/セミトラの田中君のデザインによって構成するというのは相当いいものが出来るのはないか、といことだった。
__
つまり僕にとっては何か新しいチャレンジというか、変化がなかったらやってられなかった。
結果的にインナーも含めて素晴らしい作品になっているので聴いて、見て楽しんで欲しい。
__
Sahko盤は日本に輸入されない。ただ、当初から僕はATAK盤のみのスペシャルトラックをミカに希望していた。
__
ただ、このアルバムは完全なバランスで成り立っているから難しいと言われていたんだけど、mariaのことがあってから一ヶ月くらいしてからHikariというアルバムの最後に入っている曲のCD−Rが彼から届いた。
__
何のメッセージもなかったけど、僕はこの曲はミカからmariaに贈られたプレゼントだと思っている。最初に聴いたときに呆然としたことを思い出す。彼はmariaの音楽を聴いたことはないはずなのにどこか彼女が作る世界と似ていたから。
__
こんなに静謐で優しいミカの音楽は聴いたことがなかった。
__
音はSahko盤よりも少しだけレベルを上げて、studerを通して解像度を上げたり色々している。ただ元の音が良いのでそれを失わないようにという細心の注意を払って仕上げた。
__
というわけで、このアルバムは色々な人の協力によって出来上がって、最初に書いた通りATAKの再始動の1枚となった。
__
mariaがいなくなってATAKでCDをリリースするということの想像が出来なかった時期が長かった。僕は本当にもう終わりかもなと思っていたから。
__
完璧なフォーカスでムジークのスピーカーを撮影しておいてくれた新津保さん、マットPP仕上げを見越した(つまりマットにすると結果的に元の紙の色がすごく変わる)見事な印刷をしてくれたGRAPHの北川大輔さん、僕のいつもながらうるさい変更やリクエストに付き合ってくれつつ斬新な構成、デザイン、出色な文字色をfixしてくれた田中君、mariaに代わってプロダクションマネージメントをしてくれたさやかと根本さん、マスタリングで最終的な仕上げをしてくれたキムケン、そしてもちろんMika。関わってくれた全ての人にお礼を言いたい。
__
本当にもう一度リリースが出来るようになるとは思っていなかった。
__
ジャケットのスピーカーのスイッチがONに光っていることが僕はなんかすごく気に入っている。

ATAK012 OLEVA
ATAK012 OLEVA

posted with amazlet at 09.02.21
Φ Mika Vainio
ATAK (2009-02-18)
売り上げランキング: 23478